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はじめに
青年会議所に入会していなかったら私はどのような人生を歩んでいたのだろうか。
四日市市でも、三重県でもない地域で生まれ親の仕事の都合で何度も転校を繰り返し、多くの出会いと別れを経験した。幼いころから、人との別れが当たり前となった環境の中で成長した私は、人とのつながりの必要性をあまり感じなくなり、自分の価値観だけで物事を判断し、目の前の現実だけを見る人間になっていた。
そのような人生を歩んでいる中で、私が転職を機に入会したのが四日市青年会議所であった。入会すれば私の何かが変わるかもしれない。そのような希望を持っていた。
入会当時の私は、人にもまちにも興味がなく、ただ周囲に言われるがまま活動をしていた。しかし、青年会議所の仲間とまちの未来について幾度となく語り合い、青年会議所活動に向き合えば向き合うほどに、目の前の現実しか見ていなかった私が、幸せな未来を描きたいという意識に変わった。私には、どのような未来が待っているのか、理想の未来は自ら創るものなのか、私の望む未来とは何なのか、そのような自問自答を繰り返すうちに、理想の未来を描くために必要なものを見つけ出すことができた。
それは、夢や希望だ。夢や希望を持った時、自身の人生に目的が生まれ、生きる原動力となり前向きに物事に向き合うことができた。
私の幸せな未来とは何かを想像した。その時浮かんだのは、家族や仲間、そして周囲の皆が「笑顔」で過ごしている姿だった。その未来を叶えたいと願った時、私は夢を持つことができた。
その答えが出た時から私の青年会議所への向き合い方は大きく変わった。その中で青年会議所の理念である「明るい豊かな社会の実現」が私の描く夢とつながることを知った。
さらに私の想い描く未来のためには何を学び、何をしなければならないのか理解できたとき、日々の活動に希望を持つことができた。そして、気が付くと私は夢の実現のために常に可能性を探し行動する、あくなき向上心を持った人間になっていた。
青年会議所は、誰もが夢や希望を抱き、叶える機会が得られる場所でもある。人は目指すべき理想の姿があるからこそ、現実を受け止め、立ちはだかる壁を乗り越えることができる。掲げた夢に一歩一歩近づいていく経験が自らの成長に大きくつながる。また、自らの夢の実現は一人で成し得なければならないわけではない。一人では実現困難な夢であっても仲間と力を合わせることで実現可能となる夢も存在する。だからこそ、より大きな夢の実現のためには多くの仲間の力が重要だ。青年会議所には、夢を語り合い共に歩んでくれる仲間がいる。倒れそうなときには支え、立ち止まった時には背中を押してくれる、同じ志を抱いた仲間がいる。そのような仲間がいたからこそ、これからは自分が皆を支えて背中を押し、仲間の成長から個々の夢や希望の醸成に寄与していきたいと新たな夢を描い
た。
理念を浸透させ共感を得る会員拡大
会員拡大は青年会議所が最も力を入れ継続していかなければならない活動の一つである。
多種多様な価値観を持った会員と多くの議論を重ね、新たな発想を取り入れ、 変化をすることで組織は活性化していく。その結果、青年会議所は「多様性の溢れた持続可能な組織」となるのである。
四日市青年会議所の会員数は年々減少している。入会者が卒業生と退会者の人数を下回れば会員数は減少する。会員を増やし組織を継続するために青年会議所の理念、そして運動に共感し自ら入会を決意する仲間を増やす必要がある。だからこそ、会員皆が青年会議所の運動は何のために誰のために、なぜ行っているのか、多くの人に伝え、浸透させ共感を得ることが重要である。
理念に共感した様々な価値観を持った魅力ある人財が集まった青年会議所は、今後もより良い運動を進めることができ、その結果世の中に必要とされ続ける組織になり、未来を担う新たな会員が集まる組織となる。
会員拡大と聞くと難しく考える会員も多くいるかもしれない。実は私もその一人だった。しかし、青年会議所の理念である「明るい豊かな社会の実現」を目指す中で自身の活動と成長、そして夢の実現にどのように寄与しているかを笑顔で語ることが会員拡大につながると知った時、苦手意識はなくなった。会員拡大には、誰かの言葉ではなく自身の言葉で伝えることが大切であり、経験があるからこそ共感を得られる言葉となる。
目指すべき方向が同じであれば、歩み始める地点が異なっても、足並みを揃えて目的地へと歩みを進める。その過程で会員自らの言葉で青年会議所の理念や自身の夢を語り、共感を得ることで理念が拡大し同じ方向へ歩みを進める仲間が増えていく。
個人の持つ夢や希望と青年会議所の理念が重なる時、その歩みの速度は速く力強くなる。だからこそ我々は、描く未来を実現するために理念に共感した新たな仲間を増やし続けていかなければならない。
誰もが笑顔で活動できる持続可能な組織
青年会議所の会員の資格は20歳以上40歳未満の品格ある有能な青年で、本会議所の目的に賛同し入会した者であると定款に明記されており、条件を満たせば誰もが青年会議所に入会し活動できることを指している。それは、青年会議所が多様性を受け入れる組織であることを意味している。青年会議所は誰にでも機会を提供する組織でなければならない。だからこそ我々は誰もが活動しやすく、会員が成長する機会を掴める組織になるために、常に最良を求め変化し成長をする必要がある。それは、常に会員が自らの力を最大限に発揮し活動することで、我々の運動が最大の効果を発揮できるからだ。そのために、会員一人ひとりが、これからの組織の未来について主体的に関わり、広い視野で見つめなおすことが重要である。
しかし、変化し成長する組織においても変わらないものは存在する。それは、我々が何のために存在し行動するかだ。
会員一人ひとりによって青年会議所活動の意義が異なることは当たり前であり、それは多くの価値観や考えを取り入れ時代に即した組織の発展には必要なことだ。だからこそ、会員が青年会議所の変わることのない理念を、揺らぐことのない「軸」として理解し、変化することに挑んでいかなければならない。その結果時代が変化をしようとも、目指すべきものを見失うことのない強い組織となる。
「来年の話をすれば鬼が笑う」私はこの言葉が大好きだ。本来は予測不能な未来を話しても意味がないという言葉だが、私は未来の話をする際、価値観や考え方が違う人とも笑顔で話せるとそう捉えている。
青年会議所には、会員同士でお互いの夢や希望、そして未来を語る場は多くある。青年会議所の未来を創るのは誰でもない我々だ。これからの青年会議所に何が必要か、青年会議所はどのような組織であるべきなのかを語り合おう。そして、組織としてさらなる成長のために、会員の意見だけではなく周囲の意見も取り入れ議論を重ねていこう。その先には必ず会員の皆が笑顔で活動できる組織が構築され、その笑顔が広がることで周囲を最高の笑顔にできる持続可能な組織となる。
JAYCEEとしての成長の機会
青年会議所の使命に「リーダーシップの開発と成長の機会の提供」がある。それは、青年がより良い変化をもたらす力、つまり運動を起こせる人財へと成長することを目的としている。青年会議所は、単年度制であり様々な役割を経験することで、豊富な経験を積むことができ、自己修練の成果が成長につながり、青年会議所以外の様々な活動にも活かすことができる。
四日市青年会議所は、入会して間もない会員が役割を受ける機会が増える傾向にある。この状況は会員が成長する機会を早く得られ、組織の醸成を促進できる好機と捉えている。人はなぜ新たなことに挑戦するのか。それはその先に自らの成長と実現したい夢があるからだ。そして、人は新たなことに挑戦するとき不安と期待が混ざり合い、不安が期待を上回ると、せっかくの機会を取り逃してしまう。だからこそ、我々は自らの経験から得られたものを伝え、組織として不安の軽減を行う必要がある。
企業や各種団体でも近年人財の教育制度は大幅に見直されている。なぜなら、人の成長速度には差があり、その時の役割で必要とする学びが異なるからである。人財は育つのを待つのではなく組織で育てることが重要であり、その人のステージに合わせた学びを提供する必要がある。
会員が機会を掴み青年会議所活動への意義を見出し、自らの理想と重なった時に青年会議所の本当の楽しさを知ることができる。楽しい気持ちは更なる成長につながり、成長し続けるJAYCEEとして「明るい豊かな社会の実現」に向け進むことができる。
夢や希望を描いた未来を創造するまち創り
四日市市は30万人都市として三重県内でも一番の人口を有している。しかし、年々世帯数は増加しているものの、今後のまちの未来を中心となり創り上げていく生産人口の減少や、未来のまちを創る年少人口の減少が年々進んでおり 2030年には人口全体で30万人を割ると言われている。まち創りの中心となる生産人口の減少、そして未来のまち創りの担い手となる年少人口の減少に伴い、まちの発展が止まれば、まちそのものの魅力は衰退し、人は離れ、まちは活気を失い持続可能なまちの実現から遠のいてしまう。
まちの発展の一番の方法は人口を増やすことであり、多くの人々が住まうまちだからこそ、多様性が育まれ変化をもたらすことで、まちの発展は加速する。だからこそ、まちの未来を創造する世代の人口流出を止め、流入を増やすことが必要であり、このまちが住みたい、住み続けたいと思われる、魅力溢れるまちであり続けなければならない。
このまちは昔からもの作りで栄えたまちであり0から1を創り上げることで新たな魅力を創造してまちの発展につなげてきた。そして1を磨き上げることで、魅力をより素晴らしい魅力に進化させてきた。0から1を生み出す力は、今後の選ばれるまちになるために必要不可欠であり、新たな魅力を生み出し続けることが重要である。だからこそ我々は、まちの新たな魅力を生み出すきっかけを創らなければならない。私たちが率先して行動し、まちに住まう人と共に夢や希望のあるまちの未来を描く、そのような好循環を創り出していこう。そして、まちに住まう人々が自ら新たな魅力を創造することで持続可能なまちの未来が実現されていく、そのような夢や希望そして笑顔に溢れるまちの未来をけん引していこう。
無限の可能性を広げる青少年の育成
近年、様々な地域社会において労働力不足の観点から働き方の見直し、外国人労働者の増加、ダイバーシティへの受け入れ態勢の見直し等が加速度的に進んでいる。それは私たちの住まうこのまちにおいても例外ではない。予測困難な未来を切り拓いていくうえで我々責任世代が多様な価値観を受け入れ、笑顔溢れる持続可能なまちの未来を次の世代へと受け継ぐべく邁進していかなければならないが、多様な価値観や柔軟な発想、変化をスムーズに受け入れられる方ばかりではない。
そのような時代だからこそ、子育て世代でもある我々責任世代がいち早く順応し、未来を担う子どもたちが多くの価値観に触れ、柔軟な発想を持ち主体的に考え行動できるようになるための機会をもたらしていく必要がある。
我々人間は、必要な力を成長過程の中で育んでいくことができ、子どもは大人に比べ順応性も高く成長速度が速いからこそ、早い段階から新たな価値観や柔軟な発想を育むために、様々な機会に触れる必要がある。そこで大切なことは異なる価値観を受け入れ順応できる「心」である。「心」は人の核であり、成長と共に心には「芯」ができ、様々な価値観と共に固定観念も形成されていく。
子どもたちの、未知の未来を切り拓くうえで心の壁は、多様性を受け入れ共に手を取り合い発展していこうとする際の妨げとなりかねない。だからこそ我々は、これからの未来を切り拓いていくうえで大切な「心」のあり方を形成する機会をより多くの子どもたちにもたらしていかなければならない。
子どもたちの持つ夢の可能性は、今後の社会の希望であり、予想できない未来に受け身で行動するのではなく新たな価値観を受け入れ主体的に向き合うことで、子どもたちが自身の無限の可能性を広げ、より良い未来を想い描く、頼もしい担い手になると確信している。子どもたちに大切な「心」を形成する機会と、様々な物事に主体的に関わる機会を届け、私たちの大好きなまちの未来を託す礎としていこう。
四日市青年会議所の未来創造
「明るい豊かな社会の実現」を目指し続けた四日市青年会議所は 1955 年に諸先輩方が設立され、来年70周年の節目を迎える。そのような激動の時代に諸先輩方が描いたまちの未来と今、我々が描くまちの未来は同じものなのだろうか。青年会議所は新たな価値観を取り入れ常に進化し続けなければならない。70周年の節目を迎えるその前に一度、過去を振り返り新たに夢や希望を描いた未来を考える必要がある。
我々は2014年に、四日市JCビジョンを策定した。これは、四日市青年会議所が創立60周年を迎えた2015年から2025年の活動の指針となっている。理想を実現するためには近未来の姿を描くことが必要であり、目指すべき未来に道標があったからこそ我々の活動は迷わず、今日まで力強く進めることができた。しかし、青年会議所の理念である「明るい豊かな社会の実現」は具体性を持っているものではなく、時代や社会情勢に応じて変化していくものである。だからこそ四日市青年会議所が時代に即した運動を続けるために、中長期ビジョンを作成し未来を思い描く必要がある。皆で目指すべき未来があるからこそ力強く歩むことができる。会員皆で新たな想いを合わせ、私たちの大好きなまちの未来を描き共に進もう。
世界につながる国際交流
2022年世界会議香港大会にてJCI Visionの改定が行われた。青年会議所が若きリーダーを世界的につなげ、国際的なネットワークを形成することに最も影響力のある組織であるためだ。しかし、日本はIMD世界競争力ランキング2023年において過去最も低い順位となっている。特にビジネス効率性分野の改善がみられておらず、 起業家精神と国際経験は最下位である。そのような状況の中、現在の日本の抱える課題に少子高齢化による働き手不足があり解決策として、外国人労働者で補っており、我々の住まう四日市市においても外国人住民数が年々増えてきている。
青年会議所には「国際の機会」がある。国際の機会を自ら掴むことで他国の文化や風習などに触れ、そこに住まう方と交流し考えや思いを聞くことで、新たな価値観を持つことができる。それは、青年会議所の「ビジネスの機会」に通じ、お互いを知り受け入れることで新たなビジネスの展開につながる。
四日市青年会議所の「国際の機会」の一つに雨港國際青年商會との交流がある。1985年の姉妹締結から39年間良好な関係を築き上げてきた。新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり両国への訪問が難しい期間もあったが、これからは直接他国の文化に触れ、現地の方と話すことでより多くの価値観を得ることができ、新たに得られた価値観は必ず地域社会、仕事、青年会議所活動に活かすことができる。
進化し続ける時代に即した広報
どの時代においても、広報は重要であり多くの方々へ我々の運動を伝える最良の手段である。現代社会において情報環境が急激な進化を遂げており、誰もが気軽に情報を発信し受け取ることができる。それは情報が溢れた社会であることを指している。また、情報を扱うツールも増えており、ターゲット層に合わせた広報が必要になっている。また、広報の主軸が「話題づくり」広報から、「価値づくり」広報に変化している。つまり、本当に必要な情報には「価値」がある。「価値」があるからこそ、その情報は埋もれず人の目に触れ、情報を受けた方がさらに拡散する。だからこそ、情報を発信するうえで必要なことは、常に受け取る方の気持ちになり、誰に何を伝えたいか、どうしたら伝わるかを考え発信することが重要だ。
広報の役割は、我々の活動を伝える発信ツールだけではない、何を目的に何のために誰のために運動を行っているのか、青年会議所としての理念や思いを伝える重要なコミュニケーションツールである。地域に対して我々の運動目的を明確に伝え共感していただくことで、今後共に歩んでいただける企業や団体そして新たな仲間を得られる最高の手法として活用しなければならない。
しかし、同じ広報が常に同じ効果を得られるとは限らない。同じ広報を繰り返すのではなく活動で広報戦略を変えていき日々広報を進化させよう。その繰り返しがより良い広報につながる。会員一人ひとりが広報の大切さに目を向け、青年会議所の思いを伝えることでより多くの方々に我々の思いが伝わる。そうすることで、我々の運動は広がり、さらなる効果を生むこととなる。
可能性を広げ希望溢れる出向
青年会議所の機会の一つとして「出向」がある。これは一歩を踏み出せば会員誰もが得られる権利であり、私は幾度も出向をした。出向を私なりに表すと「 希望溢れる」の一言につきる。それは、出向には自身の可能性を広げる機会が多く存在するからだ。LOMとは違う雰囲気に触れ、知見が広がり、さらなる成長を感じ取ることができる。その中で自分の人生観を変えるような出会いや出来事も存在し、何よりもより多くの仲間が増える。私はLOMを代表して多くの出向をさせていただいた。その出向で得られた経験を四日市青年会議所の活動につなげている。その経験とつながりは必ず今後の人生に活かされる。だからこそ、出向をこれからの自身のさらなる成長の機会として捉えていただきたい。個人の成長がひいては組織の成長へとつながっていく。「希望溢れる」出向制度をぜひとも活用してもらいたい。
むすびに
人は夢や希望を持つことで力強く歩み続けることができる。
夢や希望は誰でも持つことができ、それは自らの人生に笑顔を持たせる。
時には辛く苦しいことも自らが実現させたい未来があるからこそ立ち向かい超えることができる。夢や希望は一つだけでなくてもいい、大きくても小さくてもいい。
人間は日々成長する生きものである。時の流れに身を任せ進む者と自らが道を切り拓き目的地に向かう者では成長するスピードは異なる。その差は自ずと出てくる。
自身の成長は、周りを幸せにする。それは、意識が変わり現在まで見えていなかったも? が見えてくるからだ。
必ずしも青年会議所に所属していれば誰もが夢や希望を持つことができるわけではない。
しかし、もう一度あえて言おう。青年会議所は、誰もが夢や希望を抱き、叶える機会が得られる場所だ。
何のために、誰のために何故青年会議所に入会したのか、そこに小さくとも夢や希望があったからこそ入会を決意したのではないだろうか。その夢や希望の実現のために青年会議所を活用し自身を成長させていこう。そうすれば、さらなる夢や希望が生まれる。
私には、自身を育て変えてくれた大好きな青年会議所の仲間を「笑顔」にさせたいという夢がある。そして、仲間が笑顔になればその家族が、そして地域に住まう人々が笑顔になると信じている。まちに笑顔が溢れれば、必ずその先には「明るい豊かな社会」が待っている。
だからこそ、我々が未来に向けて夢や希望を持ち皆が「最高の笑顔」で過ごせる未来を創っていこう。